7)「漫草(みだりぐさ)と葉隠命名の由来」
 葉隠の冒頭に掲げられた序文ともいうべき漫草(みだりぐさ)を読んでみましょう。漫草には、葉隠の口述者山本常朝と田代陣基との初めての出会いの様子が書かれ、常朝隠棲の理由が記されています。
 それは、殉死禁止令のため、死ぬわけにいかず、一方、世継ぎの君に仕えることもできない常朝が、死を待つ仮寝の庵に閑居し、そこに田代陣基が訪ねていって、閑談を始めるといった態であり、西行の山家集の中の歌「葉隠に散りとどまりし花のみぞ しのびし人に会うこちする」に正に符合する内容となっています。
 よって、葉隠の命名の由来もここにあり、決して最近までの通説にもなっていた「影の奉公」などというものではないことがわかると思ってます。
kaki.gif (15456 バイト) *故 手塚辰夫氏筆の
「干し柿」の図

 山本常朝によって葉隠の内容が語られたあたりは、干し柿の産地で、その一種に「葉がくし」という種類があります。それで、その柿が葉隠命名の由来という説がありますが、いささか無理な感じです。
しかしこの絵は、常朝と田代陣基との歓談の雰囲気を伝えるよい絵だと思います。
 手塚さんには「ふるさと雑記帳」という名著があります。