6)「葉隠の武人たち」
 葉隠に因む武人は沢山います。とりあえず取り上げたい人として、明治以降では乃木希典大将、空閑昇少佐、肉弾三勇士、そして大空のサムライ・坂井三郎氏など。
 これらの人物の内の一体だれが葉隠的人物であるのかは議論の別れるところです。
 私は、著書「大空のサムライ」の中で、葉隠にもふれておられる零戦のエース坂井三郎氏こそ真に葉隠的な生き方、あるいは戦い方をされてきた人物ではないかと思っております。坂井氏は日華事変以来第二次大戦終末まで、96式、あるいは零戦のパイロットとして60数機の敵機を撃墜した空のエースであられ、その経験談は数々の著書にも書かれております。2年半程前、機会があって坂井氏のお話を伺うことができ、私は、上記のとおり坂井氏こそ葉隠的武人であるとの感を深くしました。是非多くの方々に坂井氏のお話を聞いていただきたいものと思っています。
 坂井氏のお話には、戦争という極限状態を経験した方でなければわからない緊張感、切実さがあるとともに、正に鍋島直茂のいう「実」をもって物事を判断し、死地を脱出してきた方の、あらゆる場面に応用できる人生の知恵、あるいは、企業や国家の方針・生き方というものが示されているのです。
oozora.gif (8712 バイト) *坂井三郎「大空のサムライ」
 坂井氏は、著書「大空のサムライ」の中で葉隠に触れておられます。そして、「死ぬことと見付けたり」の文言は、決して死に急ぐことをすすめたものではない、と述べておられます。むしろ坂井氏の戦争観は戦国時代の武士そのものというべきでしょう。